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本「モンスーンの贈りもの」

本「モンスーンの贈りもの」ミタリ・パーキンス 
永瀬比奈訳 すずき出版 MONSOON SUMMER

おもしろかった。そでを読んだ限りでは期待できない気がしたけど、主人公のジャズに共感できたし脇役の人々も誠実で好感がもてる。よかった。

そでの紹介文
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「モンスーンの季節の始まりね」ママが言う。「なにそれ?」エリックがたずねた。「雨季よ。私たちが帰る8月までつづくの」
駅周辺の線路沿いに並ぶわらぶき屋根にも雨は降り注いだ。もじゃもじゃの髪をしてボロを着た子供たちが水たまりで水を跳ね飛ばしながら踊っている。
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あらすじ
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15歳のハイスクールの学生のジャスミンことジャズは、母親がインド人父親がアメリカ人、弟と四人家族でバークレーに住んでる。同級生のスチーブと一緒にビジネスを立ち上げて収益を出している。もうすぐ車が買えるくらいだ。ママはインドの孤児院出身、アメリカ人の養女になってアメリカ人になった。夏休みを利用して家族四人でママが捨てられていた孤児院に行くことになった。ジャズはスチーブが好きなので離れたくない、美人な女の子が狙っているし。ママは貧しい人恵まれない人を助ける社会活動家だ。しぶしぶながらもインドに行く。スチーブにたまに電話する。「好き」が言えない。言ったら終わってしまう。友情もビジネスも。パパは孤児院のシスターたちにPCを教えてあげる。弟は子供たちとサッカーに夢中。料理のメイドとしてジャズと同い年のインドの女の子が来る。料理をおそわったりおしゃべりするうちにスチーブのことも打ち明け、告白しましょうと励まされる。ダニタは本当にいい子だ。妹二人と自分と、3人でここ(孤児院)に捨てられていた。18になったら外に出ないといけないので、それまでに妹たち二人も引き取って結婚してくれる人と結婚するか、妹たちを養える仕事につくかどちらかしかない。妹と離れるのはいや。ダニタはジャズのビジネスの話に興味をもつ。ジャズはかってホームレスの女性に店番をまかせ売り上げをとられてしまったことがある。ホームレスを信用したことをくやんでいる。もうだまされるのはいやだ。ダニタの力になることを躊躇する。ダニタは衣装を作ることを仕事にしたいと思っている。200万くらいは必要だ。スチーブと一緒に始めたビジネスで貯めたお金と同額だ。冒険をしなければ得られるものは何もない。スチーブに告白の長い手紙を送り、ダニタには匿名の基金を寄付する。手紙を受け取ったスチーブは信じられないと喜び、好きどうしだったことがわかった。嘘みたい。ダニタの衣装は成功している大きな店で扱ってもらえることになり早くも足がかりをつかんだ。嘘みたい。ママはジャズが寄付したことに気づいてるみたいだ。ありがとうモンスーンの季節。
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月並みな言葉だが、「みずみずしい」小説だったモンスーンなだけに。登場人物のカタカナの名前がたくさん出てくるがむずかしくない。ジャズの友達なので友達の名前はすぐ覚えられるようにそれぞれの子供たちの名前は覚えられる。ジャズがスチーブに打ち明けられないのがなんでと思ったが、ジャズは自信のない女の子だからだ。明るいし前向きだけど、女の子として自信がない。一歩を踏み出すまでの葛藤が、丁寧で面白かった。ダニタに結婚を申し込む相手が出てくる。大人の息子がいる中年の男で、二人の妹も一緒でいいという。ジャズは、なんで中年の男がティーンエイジャーと結婚しようなんて思うんだろうと怒る。ダニタは結婚しようと思うと言う。だめだよそんなの。ビジネスを始めようよ。(この時点ではまだ自分が出資しようとは考えついていない)。市場の奥の鶏肉店のおやじというので見に行くジャズ。おなかがでっぷりしたおじさん。ビジネスを応援することでホームレスにだまされた失敗を乗り越える。よくわからなかったのが、スチーブとのビジネスで「ブース」という場所だったが、キオスクくらいの場所なんだろうか。店番をまかせたというくらいだからレンタルボックスではなさそうだ。思い出の絵葉書を売ってる店だという。絵葉書がそんなに売れるのかな。学校のあと2時間くらいを店番と商品補充や帳簿付けなどで過ごすんだろうか。彼らのビジネスは想像しづらかった。インドではジャズは外国人用の学校に通う。リムジンで送り迎えの大金持ちの子供もいる。孤児院出身で同い年なのに働きに来るダニタもいる。欧米人とインド人、貧富の差がお涙頂戴ではなくあるからあるのだというあっけらかんとしたタッチで描かれている。子供の目から見るとあるからあるんだ、ということだろうか。感慨がない。そこがよかった。子供たちは、自分たちの暮らしているところ自分たちのいるところが普通なんだと思うから、普通の中でできることをしよう為になることをしようと頑張る。そして変わっていく。初めから否定的に見たりしない。澄んだ目で世の中を見ている。スチーブとのことはきっとうまくいくんだろうなと予想したけれど、うまくいくようにと応援してた。ハッピーエンドでうれしい。

by kumaol | 2016-08-24 22:18 | 雑記