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本「コンビニ人間」村田紗耶香

2日で読める面白いと薦められた。ベストセラーだから題名は知っていたが本屋大賞か何かかと思ったら芥川賞だった。変人な主人公がつまらない見栄を見栄と認めずに世界の一員になり受け入れられてはみ出さないための自己抑止と変換するがコンビニの一部でいたいと発狂する話。変人には、世界(笑)の仲間になりたいと願う変人と世界(?)なにそれと無関心な変人の二種類があるのだと思った。仲間になりたい目立ちたくない同じように行動したい楽だから、という行動志向の主人公古倉恵子は子供の時から変わった子と言われていて、子供たちが死んだ小鳥を拾って泣いている。恵子はみんなで食べようと提案する。お父さんも妹も焼き鳥や空揚げが好きだからみんなで食べよう。何を言うの、埋めてあげましょう。花をちぎって花を殺して葬式をする。恵子には理解できない。小学校では、男子がけんかしている。喧嘩をとめて、先生をよんできて。周りは大騒ぎだ。スコップを取り出して全力で頭を殴ったらおとなしくなった。みんな大騒ぎ。両親はどうしたら治るんだろうと頭を抱える。という昔語りがある。コンビニでは客のしぐさを緻密に観察して、クレカで払いたがっているとか在庫補充とか手際よくやれる。18年同じ店に勤めていて店長は8代目だ。ここでは同僚の女の子の話し方を真似することでカメレオンできていると思っている。白羽という尊大な男が入ってきて婚活目的という。仕事はしない、客をストーキングする、首になる。首になってもストーキングした客を物陰から見ていて、恵子はコンビニの一部なので、堂々と注意する。コンビニの気持ちになっての行動は自然と自信をもってできるのだ。縄文時代の村時代から男は狩りで獲物をしとめ女は子供を産む。それができない男も女も異物なのだ。僕はずっとこの世が異物を認めないことに苦しんできた。「それなら一緒に暮らしましょう」と誘う恵子。恵子の友人たち(ただのクラスメート)や妹は結婚して子供がいる。それがこの世界の居場所なのだ。あるいは、しっかりした会社の会社員であること。どちらでもない自分はどちらでもないことに不満はないのだが友人や家族が驚いたり異質なものを見る目をしたりあわれんだり困ったり気の毒そうにすると、同じになれば迷惑がられないのであれば同じになろう、とするのである。白羽は馬鹿で傲慢で自尊心肥大男なので、こんなことをいう。「古倉さんはなんでそんなに平然としているんですか。自分が恥ずかしくないんですか」「え、何でですか」「バイトのままババアになってもう嫁の貰い手もないでしょう。あんたみたいなの、処女でも中古ですよ。薄汚い。子供も産めない年増の女が結婚もせずムラをうろうろしているようなものですよ。」では、わたしと婚姻届けを出せばいいのではないですか。世界が縄文時代だというなら普通の人間という皮をかぶってそのマニュアル通りにふるまえば村を追い出されることも邪魔者扱いされることもない。コンビニの「店員」という架空の生き物を演じるのと同じように「普通の人間」という架空の生き物を演じるんです。それができないから苦しいんだという白羽に対して、意思がないからムラの方針があるならそれに従うのは平気ですと答える恵子。白羽は家賃滞納でシェアハウスを追い出されていた。恵子のアパートに住むのは都合よかった。僕と古倉さんの利害は一致しているからここにいてやってもいい、と避難所に決定する。コンビニでは二人が同棲していると知れてきゃあきゃあと噂になる。一緒に住んでるだけでなんで。妹も喜ぶ。やっと彼ができた。妹が喜ぶならよかった。白羽は風呂場で寝て風呂場で食事する。家賃を肩代わりした義妹が北海道から出てきて金を返せと迫る。この男はほんとにケチでろくでなしでどうしようもない。白羽は恵子をもっとちゃんとした会社の正社員にさせようとする。コンビニをやめて、就活して面接に行く途中で、コンビニによると、コンビニが苦しがっている。新人二人のレジで店の中が回っていないのだ。陳列を直しテキパキと、コンビニの声が聞こえる。わたしはコンビニ人間なのだ。妖怪人間の主題歌がかぶる。怒って歩き去る白羽。終わり。
世界とちがうわたし、なんて恥ずかしくて言えない題材だったが最近は普通に人気だ。繊細なあたしだったり異物のわたしだったり難しいのは世界の描き方でここでは結婚と子供と正社員というわかりやすい方向であるが断定すぎて乱暴な二極である。風呂敷を広げるよりは短編でわかりやすくしたほうがキャラが面白く見えてよいのだけれども、例えば序盤の小鳥の話などは、かわいそうだからという感受性に頼った世界と異物の対照であるが、現実味に欠ける。小鳥の死骸をもってきたら、病原菌のかたまりだから置きなさいというのが大人なのでは。かわいそうとか気持ちが理解できない恵子をあらわすためのエピソードが嘘くさい両親や大人たちを目立たせてしまった。喧嘩に強いものはためらいなく金属バットを振れる奴とウシジマくんで言ってた。スコップを振り下ろせる恵子はなくなって困るものがないのだ。こうなったらこうなるという次が想像できない子供なんだろう。同窓会の友人たちが結婚っていいわよ子供っていいわよというけれども、古臭い。いつの世界なのかしら。カラーテレビが出始めたころ?恵子も白羽も面白いんだけど相対する世界がつまらなかった。義理の妹はおもしろかったな。恵子が、もっと世界の一員になれるためには子供をもったほうがいいでしょうかと聞く、「勘弁してくださいよ、バイトと無職で子供作ってどうするんですか。ほんとにやめてください。あんたらみたいな遺伝子残さないでください。それが一番人類のためですんで」この義妹は合理的な考え方のできる人だと感心する恵子。どうでもいいと思ってることなんだから質問しなくてもいいのに、という場面。関心ないくせにすりよろうとしてきて嫌われるタイプ(恵子)、コンビニでも誰よりも率先して働くが、やめると告げるとあっさり辞めさせられる。誰よりも一所懸命働いているが協調性がなく独善的なことがわかる、人にとっては大事な人ではないのだ。恵子は見たことないけれど白羽みたいな男は結構いた。女は寄生虫論者。うまく書けてる。社会学的アプローチなのかな。羊と鋼の森は繊細なぼくとやさしい世界だったけどコンビニ人間は埋没する歯車とガラス窓の向こうの世界というところか。世界の一員村の構成員になれば楽だと思うだけでどうでもいいのだ世界と自分との間にはガラス窓があるのだから。コンビニ人間だとわかってからは、「世界」にちょっかいださずにいる気がする。よかったね。

by kumaol | 2017-09-27 23:03 | 雑記