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本「イヤミス短篇集」真梨幸子

イヤミスってご近所ミステリーのことだと感覚的に思ってしまうんだけどそれはニア。いやな気持のするミステリーのことだそうだ。いやな気持にならないんだけど。あいまいにもごもごとけむに巻いて終わりになってしまうのは嫌な気持ちになる。ストーリーには嫌な気持ちにならない。プライベートフィクションという題名のハードカバーの本からの短編が3つほど入っている文庫本。短編もうまいなあ。面白かった。
「1999年の同窓会」
真梨さんは同窓会が好きね。学校に通っていた子だったのかな。作家として成功した男のもとに同級生を名乗る男が接近してきて、同窓会を開こうという。片思いのレイナちゃんも呼んであるから。会場費100万超を今日中に支払ってくれとホテルから電話があって大慌てする作家、そもそも同級生は本物なのかホテルの電話は本物なのか、詐欺じゃないのか。同窓会はちゃんと開かれてレイナと結婚するけれども、レイナは夫の金を自分名義にせっせと移動させているのだった。
「いつまでも仲良く」
痩せて美しくなる娘とやせる食事と偽って甘いクリームをたっぷり入れる母親の話を軸に学生時代の友人たちとの妬みや意地悪を絡める。小町風な話。友達にいちいち嫉妬する人なんているんだろうかと思うけれどもこの話みたいに勝った負けた私のほうがきれい私のほうが恵まれてると井の中の蛙ごっこをしてたら蛙以外にはなれなさそう。
「シークレットロマンス」
官能小説に挑戦して結構うまいです。文章力があるから普通の小説も書けそう。営業の幹也は派遣の子と付き合っているが上司(男)が幹也を誘惑してただならぬ関係になるが、派遣の子と上司(男)は最近付き合い始めていて幹也を牽制するために幹也を誘惑したのかと思わせて実は。派遣の子に悪感情のお局様たちの悪の手がじわじわと、という異常にしつこい密な人間関係。密は彼女の小説の特徴で、実際こんな狭い世界はないだろうと思われる、それでご近所ミステリーなのだ。(違う)
「初恋」
更年期少女でも使われた男と思わせて女という。オスカル風味な話。男だと思ってた笑。設定と結果は面白いのだが経過をいきなりハショルので、たぶん殺したのは男だと思っていた女なんだろうけれどどうやってがわからない。いきなり家に侵入して殺人をやり遂げられるものかしら。できちゃったからできちゃうとしか言えない。
「小田原市ランタン町の惨劇」
ナンパ男と軽い女とメンヘラ女の恋愛模様で、ありそうだなと思わせる軽い書き方をしていてやはり文章が上手である。ありきたりな結末なのだが結末を知るまでは騙されていた。
「ネイルアート」
掲示板の管理人を任された主人公が掲示板の言い争いにいちいち神経をすり減らしネット世界に翻弄される。一方で掲示板の住民シイナさんが自分のことを知っている。恐怖。シイナさんは自分の子供がうるさいから寝ている間に深爪させて深爪が痛い間は子供が静かでいるから癖になってしまっている。水曜日に会いに行くとソースに書いてあるのを見てしまい、あたしの爪もはがされてしまう。本当にはがされていた。犯人は隣の椎名さんだ!いつも子供が泣きわめいてうるさいし。精神衰弱になった自分ではがしてしまっていたのだ(たぶん)。犯人も意外な人物、ていうかこんなめんどくさい男はいやだ。

どれも面白かった。よくいろいろと思いつくなあと感心する。





by kumaol | 2017-10-18 22:47 | 雑記